1936年に起きた阿部定事件(あべさだじけん)…
これは殺害した男性の性器を切り取るという昭和史に残る猟奇事件ですが、1976年10月16日にこの事件を題材として大島渚監督が製作した映画「愛のコリーダ」が日本で公開されました。
この映画は日本初の「本番映画」として猥褻(わいせつ)か芸術かを巡る大きな議論を巻き起こしたのです。
名前:大島渚(おおしまなぎさ)
生年月日:1932年3月31日~2013年1月15日(享年80歳)
職業:映画監督、タレント、俳優
出生地:岡山県玉野市
学歴:京都大学法学部
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阿部定を演じた松田英子さんと相手役の藤竜也さんの絡みは、全編の約8割が性愛場面という内容に、ちまたでは松田さんに本番手当がついたのではないか?とのウワサも流れました。
日本公開に先立ち、5月に行われたカンヌ映画祭では、外郭団体主催による監督週間のトップを切って上映されたのです。
現地では、「ポルノではなくエロチシズムだ」と絶賛され、大入り満員の大盛況…
10回を超える記録的なアンコール上映回数となりました。
その後、カンヌに続いて行われたベルリン映画祭でも話題をさらったのです。
上映初日にはベルリンで、性器を切り取るシーンなど100カ所以上に暴力シーンとポルノが見られるとして、フィルムが押収される騒ぎが起きました。
上映は2日後に再開されましたが、猥褻(わいせつ)ではなく、残酷すぎることが理由であるとのウワサも流れました。
海外で大評判の「愛のコリーダ」ですが、日本での公開はスンナリとは進まなかったのです。
フランスでは無修正だった作品が、日本では下半身全体へのボカシや約2分間にわたる本編カットといった大幅な修正がなされたからです。
さらに、スチール写真を利用して、公開に先駆けて出版された単行本「愛のコリーダ」が、猥褻文書に当たるとして摘発される騒ぎとなりました。
単行本の裁判では、京都大法学部出身の大島渚監督が全力で闘うことを宣言…
大荒れの展開となったのです。
公判で卑猥な言葉が飛び出し、証人が法廷で春画を掲げて見せるなど前代未聞の裁判でした。
大島監督は「これは芸術であるから猥褻ではないという主張はしない。もともと猥褻なるものは存在しない。猥褻、なぜ悪いというのが裁判に臨む基本的な態度だ」と陳述…
「単行本の摘発は映画の身代わり弾圧であり、冤罪」と語りました。
裁判は1982年6月に結審…
判決は「性表現の程度は大胆化し、往時タブー視された性表現方法が公開流布され…徐々にそれら性表現に慣れ…大胆な性表現をも肯定し、受容するよう変化しつつある」と猥褻表現は社会通念を元にし、許容の目安を見い出すべきとして1審、2審とも無罪となったのです。
1976年当時、大幅に修正されて公開されましたが、24年後の2000年2月にノーカット版が日本公開となりました。
一部ボカシは入ったものの、限りなく大島監督の製作意図に近い完後が上映され、再び話題を呼んだのです。
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