1980年代

小池朝雄(刑事コロンボの声優)…肺不全(死因)のためにこの世を去る




 

「刑事コロンボ」の声でも幅広い人気があった声優の「小池朝雄」さん。
俳優としては、東映や日活などの映画やテレビドラマに数多く出演し、中でも東映では「仁義なき戦いシリーズ」の常連でもありました。

小池さんは善人・悪人と分け隔てなく演じることのできた名俳優でもあったのです。
そんな小池さんが亡くなったのは、1985年3月23日のことでした。

小池朝雄

名前:小池朝雄(こいけあさお)
生年月日:1931年3月18日~1985年3月23日(享年54歳)
職業:俳優、声優、ナレーター
出身:東京府(現・東京都)
学歴:東京都立青山高等学校




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小池朝雄さんが東京・築地の国立がんセンターで最初の手術を受けたのは1983年10月のことでした。
その後は復帰を果たし、1984年春から東阪企画の「鬼龍院花子の生涯」(TBSテレビ)にレギュラー出演しましたが、7月に再入院した時には癌が気管支にまで転移していたのです。

コバルト照射などの治療をしながら、3回ほど入退院を操り返しました。
その間、つとめて明るく振舞ってはいましたが、最後の仕事になったのが1985年3月18日に声の出演をしたテレビ朝日の「宇宙からの証言」でした。

その後、22日に呼吸困難を訴え、国立がんセンターに緊急入院。
その夜には激発性の肺不全に陥り、午前3時34分に妻の菱子さんと長女の暁子(あきこ)さん(当時21歳)、次女の尚子さん(当時17歳)に看取られながら、わずか54年の生涯を終えたのです。

睡眠剤を投与されて、眠るように安らかな最後でしたが、病状が急変する前には「菱子ありがとう、みんなにもな…」と家族に言い遺していました。

通夜と葬儀(3月25日)は、東京・世田谷区北烏山の専光寺(烏山寺町内)でしめやかにいとなまれました。
その際に俳優仲間も多く駆けつけました。

見舞いに行こうと思ったが、こっちの元気な姿を見たら辛いんじゃないかと遠慮した。昔から僕と仲谷昇と小池は仲が良かったんだけど、僕らが芝居に出てるのがうらやましかったんでしょうね。仲谷昇には「死んでたまるか」と言ってたらしい。やっぱり見舞いに行きそびれたのが心残りですね。

と、文学座で仲間だった北村和夫さんが語れば、文学座分裂の後に行動を共にしていた神山繁さんは、

彼と最後に会ったのは4ヶ月前、僕らの劇団の舞台稽古を見に来てくれた時、直感的に「小池さんはお別れを言いに来たんじゃないか?」と思った。僕は彼の病気のことを知ってましたからね。いつもキツイ批評をする彼が、僕の手を握りしめて「面白かったよ」と珍しく褒めたりして。元気な時はいつも厳しかったのに…

とコメントしたのです。

山崎努さんは、

文学座時代から、僕に酒の飲み方、芝居のやり方、人との付き合い方、全部教えてくれたのが小池さんだった。病院へ見舞った時、テレビの相撲放送を一緒に見て、「またいい芝居をやろう」と約束したのに。あまりに突然だったが、みんな一度は死ぬんですよ。どうせ僕だっていつかは死ぬんだ。これも仕方ないでしょう。

と、語りました。

劇団・昴(すばる)の仲間によると小池さんは酒豪で、ボトル1本は軽くあけていたと言います。
また、劇団の後輩や役者以外の友人も引き連れて、何度も飲みに行っていました。

「酒でストレスを発散させていた」と、付き合いの多かった堺正章さんも語り、

“長”のつく人間が大嫌いでね。飲み屋にどこかの社長や会長がいたりすると、小池さんは片っぱしからイビリまくるんです。その度に仲に入って苦労したけど、一緒に仕事をやる時は心強かった。野球で言えばホットコーナーをがっちり守ってくれましたからね。

と、振り返りました。

小池さんは「刑事コロンボ」のキャラクターをそのままにしたような反権力の庶民派でもあったのです。
また、ヤクザ映画での親分役などの悪役も冴える一方で、シェイクスピア俳優としても一流で「マクベスをやらせたかった」と、俳優で文学座前代表でもあった加藤武さんが悔しさを噛みしめていました。

戦後の日本文学界を代表する作家の一人、三島由紀夫さんは、1956年頃の小池さんの印象を、

おかしな役もいける。真面目な役もいける。器用な役者のようでいて、不器用な面白さも出す。1957年度のホープとして推す所以である。若いくせに座談の名人。彼がスビーディな話術で、人の話をすると、そのデッサンの確かさと、漫画化の巧みさのために、まだ見ぬ人物に親しみを抱かせるほどだ。これが多分、彼の演技術の基本である。

と評価していました。
酒を愛し、仕事を愛し、多くの人に愛された名俳優の最期だったのです。




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