1977年11月8日午前10時50分…
ホテルの会見場に昭和の大女優・「高峰三枝子」さん(当時58歳)が弁護士に付き添われて姿を現しました。
用意された椅子に座ると、高峰さんはしばらくうつむいていましたが、意を決したように顔を上げて気丈に事件のあらましを語り始めたのです。
名前:高峰三枝子(たかみねみえこ)
本名:鈴木三枝子(すずきみえこ)
生年月日:1918年12月2日~1990年5月27日(享年71歳)
職業:女優、歌手
出生地:東京府芝区露月町(現:東京都港区)
学歴:東洋英和女学院(高等女学校)卒業
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一人息子の鈴木清貴さん(当時28歳)が愛宕署に逮捕されたのは、2日前の11月6日午後10時30分…
指名手配を受けていることを知り、滞在先の香港から急きょ帰国して出頭したのです。
容疑は覚醒剤取締法違反…
暴力団員と共謀し、覚醒剤を売り渡したというものでした。
後にこの暴力団員と私設馬券を売るノミ屋をやっていたことも判明しています。
高峰さんは会見では涙を流しながら、ひたすら頭を下げましたが、世間からのバッシングは凄まじいものでした。
誰の目にも「母親の甘やかし過ぎが原因」と映ったからです。
高峰さんは1947年に結婚し、1949年に息子・清貴さんを出産します。
夫とは1954年に離婚し、以来、女手ひとつで清貴さんを育ててきました。
とはいっても、家事のほとんどは忙しい高峰さんに代わって、3人のお手伝いさんが担っていたのです。
清貴さんは慶応幼稚舎に入学し、大学(法学部)まで慶応で過ごした、まさにドラ息子でした。
中学から麻雀三昧…
14歳の時には校内でタバコを吸ったのが見つかり、高峰さんが呼び出されましたが、きつく叱ることはありませんでした。
「いつか吸い出すことだから…」と許してしまったのです。
欲しいものは何でも買い与えました。
18歳になるとスポーツカーを乗り回して人身事故を起こしたのですが、高峰さんが弁護士にすがり、示談で済ませます…
清貴さんが被害者宅を訪ねることもありませんでした。
教育が間違っていたといえば簡単な話ですが、実はそれだけが問題ではありませんでした。
実は、清貴さんが逮捕された6日に実父・鈴木健之さんもまた、ニューヨークで連邦麻薬取締局に逮捕されていたのです。
理由は健之さんが2キロのヘロインを隠し持っていたからでした。
清貴さんの実父…
つまり高峰さんの元夫・健之さんは戦前、銀座を縄張りにしていた無頼漢(ならず者、ごろつき)で、日中戦争が始まると上海に渡り、特務機関の仕事にも関わっていました。
やたらとピストルを振り回すので”ピス健”と呼ばれていたのです。
東京とニューヨークの事件に関連はありません…
しかし、清貴さんが覚醒剤やノミ屋に手を出したのは、このピス健に一因がありました。
清貴さんは大学卒業後、貿易会社を営んでいたのですが、離婚後、食いつめていたピス健が息子にタカリに来るようになります。
実父の頼みを断りきれず、数十万円の小切手をたびたび渡しました。
最初のうちはピス健がきちんと決済していましたが、それはサギ師が使う典型的な手口…
次第に要求額が大きくなり、最後に振り出した800万円の小切手が決済できずに会社は倒産に追い込まれたのです。
高利貸に追われるようになったKは母にも打ち明けられず、犯罪に手を染めたのでした。
一時、傷心しきっていた高峰さんでしたが、自分の甘やかしだけが原因でないことを知り、徐々に平静を取り戻していきました。
1981年、国鉄のCMで入浴シーンが話題になって完全復活…
1990年5月に71歳で亡くなるまで第一線で活躍しました。
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